「バイオマスプラスチック度」表示は何を意味する？環境負荷との関係を解説
バイオプラスチックに関する情報に触れる際、「バイオマスプラスチック度」という表示を目にすることが増えました。この数字が具体的に何を意味し、私たちの環境負荷への懸念にどのように応えるものなのか、疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、「バイオマスプラスチック度」に関するよくある疑問に、分かりやすくお答えします。
【質問1】「バイオマスプラスチック度」とは、具体的に何を意味するのでしょうか？
【回答1】
「バイオマスプラスチック度」とは、あるプラスチック製品に含まれる全質量、または有機炭素のうち、バイオマス（植物などの再生可能な有機資源）由来の成分が占める割合を示す指標です。一般的には、プラスチック製品の総質量に対するバイオマス由来プラスチック成分の質量の割合として表示されます。
この指標は、製品の原料の一部、あるいは全部が石油などの化石資源ではなく、再生可能なバイオマスから作られていることを示します。例えば、「バイオマスプラスチック度70%」と表示されている製品は、そのプラスチック成分の質量の70%がバイオマス由来の原料からできていることを意味します。
ただし、「バイオマスプラスチック度」は、その製品が生分解性であるか、あるいは特定の環境下で分解されるかといった「使い終わり」の性質や、製造から廃棄までのライフサイクル全体での環境負荷の低さを直接的に示すものではありません。これは、あくまで原料の由来に関する情報であることをご理解いただくことが重要です。
【質問2】「バイオマスプラスチック度」が高いほど、環境負荷は低いと言えるのでしょうか？
【回答2】
「バイオマスプラスチック度」が高いことは、化石資源の使用量を削減し、再生可能な資源への転換を進めるという点で重要な意味を持ちます。バイオマスは植物が成長過程で大気中の二酸化炭素を取り込むため、理論上は焼却時に排出される二酸化炭素と相殺され、カーボンニュートラルに貢献する可能性を秘めています。
しかし、「バイオマスプラスチック度」が高いことが、必ずしも製品全体の環境負荷が低いことを保証するわけではありません。環境負荷は、原料の栽培（土地利用、水使用、肥料、農薬）、輸送、プラスチックへの製造プロセス、製品の加工、使用、そして最終的な処分（リサイクル、コンポスト、焼却、埋立）といった、製品のライフサイクル全体を通じて評価する必要があります。
例えば、遠隔地で栽培されたバイオマスを大量のエネルギーを使って輸送・加工したり、焼却時に有害物質が発生したり、適切に処理されずに環境中に残留したりする場合には、バイオマスプラスチック度が比較的低い製品や、場合によっては従来のプラスチック製品と比較して、必ずしも環境負荷が低いとは言えない可能性もあります。
したがって、「バイオマスプラスチック度」は、環境負荷評価における一つの重要な要素ではありますが、これだけで環境負荷の全体像や低さを判断することは難しいです。より総合的な評価には、ライフサイクルアセスメント（LCA）の結果などを参照することが望ましいです。
【質問3】製品を選ぶ際、「バイオマスプラスチック度」の表示をどのように捉えれば良いでしょうか？
【回答3】
製品に表示されている「バイオマスプラスチック度」は、その製品が再生可能なバイオマスを原料の一部に利用していることを示す、環境配慮への取り組みの一つと捉えることができます。化石資源への依存を減らすという観点からは、意義のある情報です。
しかし、前述の通り、この表示だけで製品の環境負荷の全てを判断することはできません。製品の環境配慮度を評価する際には、「バイオマスプラスチック度」に加え、以下の点も考慮に入れることが推奨されます。
- ライフサイクル全体での評価: その製品がどのように製造され、使われ、最終的にどうなるのか、全体像を把握しようとすること。
- 信頼できる認証マーク: バイオマスマークのように、第三者機関による認証は、一定の基準を満たしていることを示す情報源となります。認証基準を確認することで、どのような点（例：バイオマス度、安全性、特定の環境での生分解性など）が評価されているのかが分かります。
- 製品の設計と使い終わり: その製品がリサイクル可能な設計になっているか、あるいは特定の環境（例：産業用コンポスト施設）で生分解される性質を持っているか。また、そもそも使い捨てを前提とした製品であるかどうかも重要な視点です。
- 自身の行動: 製品を選択するだけでなく、製品を大切に長く使うこと、不要になった際に適切に分別・処分することなど、消費行動そのものが環境負荷に大きく影響することを意識すること。
「バイオマスプラスチック度」の表示は、原料の再生可能性を示す有効な情報の一つですが、それだけで「環境に優しい」と断定せず、製品のライフサイクルや自身の行動も含めた多角的な視点を持つことが、賢明な製品選びにつながると言えます。情報を提供する側としては、「バイオマスプラスチック度」の意味と限界について、誤解が生じないよう正確に伝える配慮が求められます。