疑問解決!バイオプラQ&A

バイオプラスチックの製造エネルギーは?従来のプラスチックとの環境負荷比較

Tags: バイオプラスチック, 環境負荷, LCA, 製造, ライフサイクルアセスメント

【質問】バイオプラスチックの製造にかかるエネルギーや環境負荷は、従来のプラスチックと比べてどうなのでしょうか?

バイオプラスチックは植物などの再生可能な資源を原料としているため、「環境に優しい」というイメージを持たれやすいかと思います。しかし、製品として形になるまでの製造過程では、原料の栽培、収穫、輸送、化学的な処理など、様々な工程を経ます。これらの工程にはエネルギーが必要であり、温室効果ガスの排出をはじめとする環境負荷も発生します。従来の石油由来プラスチックの製造工程と比較して、バイオプラスチックの製造は本当に環境負荷が低いのか、疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。この質問は、バイオプラスチックの環境性能を正しく理解するために非常に重要です。

【回答】製造段階だけでなく、ライフサイクル全体での評価が重要です。一概にどちらが優れているとは言えず、製品や条件によって異なります。

バイオプラスチックの製造にかかるエネルギー消費や環境負荷は、その種類(原料や製造プロセス)、従来のプラスチックの種類、そして比較の対象とする環境負荷項目(温室効果ガス排出、水使用量、土地利用、廃棄物発生など)によって大きく異なります。

まず、バイオプラスチックの製造プロセスにおいても、エネルギーは不可欠です。例えば、原料となる植物の栽培には耕作、肥料・農薬の散布、収穫、輸送にエネルギーが必要です。また、収穫されたバイオマスからプラスチックの材料となるモノマーやポリマーを製造する化学工場でも、多くのエネルギーが消費されます。これらの過程で温室効果ガスなどの環境負荷が発生します。

一方、従来の石油由来プラスチックの製造も、石油採掘、輸送、精製、重合といった工程で大量のエネルギーを消費し、温室効果ガスを排出します。

単純に製造段階だけを比較した場合、特定の種類のバイオプラスチックは、その製造に必要な特殊なプロセスやエネルギー消費量により、従来のプラスチックと比較して製造段階でのエネルギー消費や特定の環境負荷が大きくなるケースも報告されています。

ここで重要となるのが、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」という考え方です。LCAとは、製品やサービスの一生(ライフサイクル)、つまり原料の採取から製造、輸送、使用、そして廃棄・リサイクルに至る全ての段階を通して、環境負荷を定量的に評価する手法です。バイオプラスチックの環境性能を評価する際には、製造段階だけでなく、このLCAに基づき、製品の原料調達から最終的な処理(生分解、焼却、リサイクルなど)までの全ての段階で発生する環境負荷を総合的に比較する必要があります。

LCAによる評価結果は、以下の要因によって大きく変動します。

例えば、カーボンニュートラルという観点では、バイオプラスチックの原料である植物が生長過程で大気中のCO2を吸収するため、燃焼・分解時に排出されるCO2と相殺されると見なせる可能性があります(バイオジェニックカーボン)。しかし、これも栽培や製造、輸送にかかる化石燃料由来のCO2排出を考慮に入れたLCAで評価する必要があります。

結論として、バイオプラスチックが従来のプラスチックと比較して、製造段階のエネルギー消費や特定の環境負荷項目において必ずしも常に優れているわけではありません。その環境性能は、特定の製品がどの種類のバイオプラスチックで作られ、どのようなプロセスを経て、どのように使用され、そして最終的にどのように処理されるかといったライフサイクル全体で評価することで初めて明らかになります。したがって、「バイオプラスチックだから全て環境に優しい」と一概に判断するのではなく、製品ごとのLCAデータや認証情報などを参照し、総合的に評価することが重要です。技術開発や生産規模の拡大により、今後バイオプラスチックの製造における環境負荷がさらに低減される可能性もあります。