バイオプラスチック製品に表示されるマーク、何を意味するのか
バイオプラスチック製品が市場に増えるにつれて、様々なマークが表示されているのを目にする機会が増えました。これらのマークは環境への配慮を示すものとして期待される一方で、その意味が分かりにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、バイオプラスチックに関する主なマークについて、その意味するところと、それを見る上で知っておくべき点について解説します。
【質問】バイオプラスチック製品についているマークには、どのようなものがあるのですか?
製品パッケージに表示されているマークは、その製品が特定の基準を満たしていることを示すものです。バイオプラスチックに関連するマークは、主にその「原料」に関するものと、「使用後の分解性」に関するものに分けられます。
【回答】 バイオプラスチックに関する代表的なマークとしては、以下のようなものがあります。
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植物由来原料の使用を示すマーク:
- バイオマスマーク: 日本バイオプラスチック協会(JBPA)が認証するマークです。製品の乾燥重量に占めるバイオマス由来成分の割合が一定基準(原則25%以上)を満たしている製品に表示されます。このマークは、化石資源の使用量削減に貢献することを示すものですが、製品の分解性を示すものではありません。マークに付随する数字(例: バイオマスマーク25)は、バイオマス由来成分の割合を示す場合があります。
- その他: 海外にも同様の目的を持つ認証マーク(例: OK biobased、USDA Certified Biobased Productなど)が存在します。これらは、製品にバイオマス由来の原料が使用されていることを示します。
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特定の環境下での生分解性を示すマーク:
- 生分解性プラマーク: 日本バイオプラスチック協会(JBPA)が認証するマークです。特定の環境下(例: コンポスト施設内、水中、土中など、それぞれのマークが示す条件)で微生物によって最終的に水と二酸化炭素などに分解されることを示します。このマークも、どの環境下での分解が保証されているかを確認することが重要です。
- OK Compost: ベルギーの認証機関であるTÜV AUSTRIAが認証するマークで、欧州を中心に広く認知されています。産業用コンポスト施設での生分解性を保証する「OK Compost INDUSTRIAL」や、特定の条件を満たせば家庭用コンポストでの生分解性も保証する「OK Compost HOME」など、いくつかの種類があります。
これらのマークは、製品が持つ環境配慮特性の一端を示すものですが、それぞれのマークが保証する内容は異なります。マークの種類や付随する情報を確認することが重要です。
【質問】これらのマークが表示されていれば、必ず環境に良いと言えるのですか?
特定の認証マークが表示されていることは、その製品が一定の環境配慮に関する基準を満たしている証拠ではあります。しかし、マークがあることだけで、その製品が環境負荷を全く与えない、あるいは常に他の素材よりも環境に優れていると断定することはできません。
【回答】 認証マークは、製品が持つ特定の特性(例: バイオマス由来の含有率、特定の条件下での生分解性など)を示しますが、製品のライフサイクル全体(原料調達、製造、輸送、使用、廃棄・リサイクル)における総合的な環境負荷を評価したものではありません。
- バイオマス由来原料について: 植物由来の原料を使用していても、その栽培過程での農薬・肥料の使用、土地利用の変化、収穫・輸送・加工に必要なエネルギーなど、様々な環境負荷が発生する可能性があります。単にバイオマス由来であることだけをもって、環境負荷が低いと判断することはできません。
- 生分解性について: 「生分解性」とは、微生物の働きによって物質が分解される性質を指しますが、その分解には特定の温度、湿度、微生物の活動レベルなどの環境条件が必要です。生分解性プラスチックの多くは、産業用コンポスト施設のような特定の環境下で効率的に分解されるように設計されており、一般的な自然環境(土中や海中など)や家庭の庭のコンポストで容易に分解されるわけではありません。生分解性を示すマークがある場合でも、それがどのような環境下での生分解性を保証しているのかを確認し、地域の適切な分別・処理方法に従うことが不可欠です。
マークは製品の環境特性を理解するための一助となりますが、それだけで製品全体の環境負荷を評価することは難しく、過剰な期待は「グリーンウォッシュ」(実態以上に環境に配慮していると見せかける行為)と誤解される可能性もあります。製品全体の情報や適切な処理方法を確認することが、より現実的な対応と言えます。
【質問】消費者や、バイオプラスチックについて他者に説明する側が、これらのマークを見る際に注意すべき点は何ですか?
バイオプラスチックに関するマークは多様であり、それぞれが異なる意味を持っています。これらのマークを正しく理解することは、適切な製品選択や、誤解なく情報を伝える上で非常に重要です。
【回答】 バイオプラスチック製品のマークを見る際に注意すべき点は以下の通りです。
- マークの種類と意味を確認する: 表示されているマークが、「植物由来原料の使用」を示しているのか、「特定の環境下での生分解性」を示しているのか、あるいはその他の特性を示しているのかを確認してください。マークに付随する説明や数字(バイオマス含有率など)も併せて確認すると、より正確な情報を得られます。
- 生分解性マークの場合は、保証される環境条件を確認する: 生分解性を示すマークがある場合、どのような環境下での分解が保証されているのか(例: 産業用コンポスト、ホームコンポスト、土壌、海洋など)を必ず確認してください。多くの生分解性プラスチックは、特定の条件下でなければ効率的に分解されません。特に、家庭の庭や自然環境で容易に分解されるわけではない点に注意が必要です。
- マークだけで判断せず、製品全体の情報を見る: マークは製品の特定の一側面を示すものに過ぎません。製品の用途、耐久性、再利用の可能性、そして使用後の推奨される処分方法(リサイクルが可能か、地域の分別ルールに従ってどのように捨てるべきかなど)といった情報も総合的に考慮に入れることが重要です。
- 過大な表示に注意する: 一部の製品では、マークの持つ意味内容を超えて、環境に極めて優しいかのような誤解を招く表示がされている場合もあります。マークが保証する「特定の基準」を冷静に理解し、必要であれば認証機関や製品メーカーのウェブサイトなどで詳細な情報を確認することを推奨します。
認証マークは、バイオプラスチック製品を選ぶ上での参考情報の一つです。しかし、その意味内容を正確に理解し、製品全体の情報やご自身の状況(利用可能なごみ処理方法など)と照らし合わせながら判断することが、バイオプラスチックを適切に利用し、その環境配慮特性を最大限に引き出す上で不可欠であると言えます。他者に説明する際も、マークが保証する特定の基準と、製品全体の環境負荷や適切な処理方法に関する情報とを切り分けて説明することで、誤解を防ぐことができます。