バイオプラスチックの性能はどう評価する? 用途に適した種類を見極める視点
【質問】
バイオプラスチックの導入や製品選択を検討する際、どのような性能を評価し、どのような用途に適しているかを見極めるべきでしょうか。従来のプラスチックと比較して、どのような点に注意が必要ですか。
【回答】
バイオプラスチックは、持続可能な社会の実現に向けた素材として注目されていますが、その種類は多岐にわたり、それぞれ特性が異なります。従来のプラスチックと同様に、強度、耐熱性、バリア性といった基本的な物理的・化学的性能を評価することが重要です。しかし、バイオプラスチックならではの視点や、特定の用途における適合性を見極めるための考慮すべき点があります。
バイオプラスチックの性能評価の基本的な視点
バイオプラスチックの性能を評価する際には、製品の使用環境や求められる機能に応じて、以下の点を考慮します。
- 物理的性能: 引っ張り強度、曲げ強度、衝撃強度、硬度など。製品が使用中に破損しないか、荷重に耐えられるかなどを評価します。
- 熱的性能: 耐熱温度、融点など。高温環境や低温環境での使用に耐えられるかを評価します。例えば、熱い食品を入れる容器や、冷凍食品の包装材などでは重要な要素となります。
- 化学的性能: 耐薬品性、耐溶剤性など。特定の物質と接触した場合の劣化や変化がないかを評価します。
- バリア性: 酸素、水蒸気、二酸化炭素などの気体をどの程度透過させるか。食品包装などでは、内容物の品質保持に不可欠な性能です。
- 加工性: 成形性、印刷性、接着性など。製造プロセスにおいて、目的とする形状やデザインに加工しやすいかを評価します。
これらの基本的な性能評価は、従来のプラスチックと同様の手法で行われます。しかし、バイオプラスチックは原料由来や分子構造が多様であるため、同じ種類のプラスチックであっても、製造方法や添加剤によって性能が大きく異なる場合がある点に注意が必要です。
従来のプラスチックとの性能比較と注意点
一般的に、初期のバイオプラスチックは、特定の性能(例: 耐熱性、バリア性、耐久性)において、汎用的な石油由来プラスチックに劣る傾向がありました。しかし、近年では技術開発が進み、ブレンド(複数のバイオプラスチックや他の素材を混ぜ合わせること)やコンポジット化(繊維などの強化材を複合すること)により、従来のプラスチックと同等以上の性能を持つバイオプラスチックも開発されています。
性能比較において特に注意すべき点は以下の通りです。
- 生分解性との関係: 生分解性を持つバイオプラスチックは、特定の環境下で微生物によって分解されるように設計されています。この「分解される」という特性は、使用中の「耐久性」とは相反する場合があり得ます。例えば、コンポスト環境で速やかに分解される素材は、通常の保管環境でも劣化しやすい可能性があります。製品の使用期間中に求められる耐久性と、使用後の環境での分解性のバランスを見極めることが重要です。
- 特定の機能への対応: 高い耐熱性やガスバリア性など、特定の厳しい機能が求められる用途では、現状では従来のプラスチックに匹敵する性能を持つバイオプラスチックの種類が限られる場合があります。用途の要求レベルを正確に把握することが不可欠です。
用途適合性を見極めるための視点
バイオプラスチックが特定の用途に適しているかを見極めるには、性能評価に加え、以下の多角的な視点が必要です。
- 製品の使用環境とライフサイクル: 製品がどのような環境(温度、湿度、紫外線など)で使用され、どのくらいの期間使用されるかを詳細に想定します。さらに、使用後の回収、分別、リサイクル、コンポスト、焼却といった『使い終わり』のシナリオ全体を考慮し、最も環境負荷が低減されるシナリオに適合する素材を選択することが重要です。例えば、リサイクルシステムが構築されている地域では、リサイクル可能なバイオプラスチックが適しているかもしれません。適切なコンポスト施設がある地域では、生分解性バイオプラスチックが有効な選択肢となり得ます。
- 求められる環境負荷低減効果: バイオプラスチック導入の目的が、CO2排出量の削減なのか、化石資源の使用量削減なのか、海洋プラスチック問題への対応なのかなど、最も重視する環境負荷低減のポイントを明確にします。生分解性であっても、適切な処理がされなければ環境中で分解されず、マイクロプラスチック化するリスクがあるなど、特性を正しく理解することが不可欠です。ライフサイクルアセスメント(LCA)による科学的な評価も重要な判断材料となります。
- コストとサプライチェーン: 素材コストだけでなく、加工コスト、輸送コスト、そして使用済み製品の回収・処理コストを含めた全体的なコストを考慮する必要があります。また、安定的な原料供給が可能か、サプライチェーン全体での環境・社会的な影響(原料栽培地の土地利用問題など)も考慮に入れるべき視点です。
- 認証制度や標準化: 素材の品質や環境性能を示す認証マーク(バイオマスプラマーク、OK Compostなど)や、標準化された評価基準(JIS、ISOなど)を参照することで、客観的な情報を得ることができます。
まとめ
バイオプラスチックの導入や製品選択にあたっては、従来のプラスチックと同様の基本的な性能評価に加え、バイオマス由来であることや生分解性といった特性が、実際の使用環境や『使い終わり』のシナリオにおいてどのように機能するのかを深く理解することが不可欠です。単に「バイオ」という表示に留まらず、要求される性能、ライフサイクル全体での環境負荷、既存のインフラとの整合性、コストなどを総合的に評価し、最も適切な種類と用途を見極めることが、持続可能な素材利用に向けた重要なステップとなります。専門家や第三者機関による情報や評価も参考にしながら、慎重な判断を行うことが推奨されます。